世界陸上2017ロンドン大会 男子200m決勝見どころ【017】

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今回は特別編として、男子200m決勝で丸々一本の記事にした。

筆者は、男子200mは男子100mよりも注目すべき種目だと考えている。

その理由や日本代表のサニブラウン・A・ハキーム選手についての考察、筆者の優勝予想を掲載したい。 

 

なお、男子200m決勝は翌朝05:50から行われる予定で、地上波での生放送もある。

夜更かしして見るもよし、早起きして見るもよし。

 

※この記事は「テレビで放送していたらチャンネルを合わせて、日本代表がいたらとりあえず応援する」くらいの方に向けた見どころなので、いわゆる「陸上ガチ勢」の方にはぬるい内容になっています。

 

ボルト不在で大混戦の男子200m金メダルは誰の手に…?

 

今大会で一番注目を集めた種目は文句なしに男子100mだ。

だが、実は100m以上に注目すべき種目が、男子200mだ。

100mが注目を集めた理由は、言うまでもなくウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)の個人種目引退レースとなったからだ。

では、100m以上に 200mに注目すべき理由はなにか。

それはこの9年間、ボルトが金メダルを独占し続けてきたことにある。

 

ボルトは今でこそ100mのイメージが強いが、元々は200mが専門の選手だ。

初めての五輪(2004アテネ / 予選敗退)も世界陸上(2005ヘルシンキ / 8位)も、200mのみの出場だった。

初めて4×100mRに出場したのが、世界陸上2007大阪大会。

このときも個人種目は200mに参加したが、銀メダルに終わっている(ちなみに金メダルはアメリカのタイソン・ゲイ選手)。

この翌年の北京大会から五輪では3大会連続、世界陸上は19秒19の世界記録を打ち立てた2009ベルリン大会から4大会連続で男子200mの金メダルを獲得してきた(2011大邱大会でボルトがフライング失格になったのは100mで、200mでは優勝している)。

2008年~2016年にわたって陸上界で200mの覇権を握り続けた男は、今大会は100mに専念するため、早い段階から辞退を表明していた。

絶対王者の不在となった男子200mは、辞退表明の直後から大混戦が予想された。

そして、昨日の準決勝では新たなヒーローになりうる素質を持った選手が現れ、世界中の度肝を抜いた。

 

決勝での世界中からの注目の的は、サニブラウン

 

その選手は言うまでもなく、サニブラウンだ。

 

レースは日本時間の深夜に行われていたため、今朝のニュースを見て衝撃を受けた人も多いだろう。

現在18歳5ヶ月のサニブラウンは、世界陸上男子200m史上最年少での男子200m決勝進出を決めた。

それまでの最年少記録は18歳11ヶ月の、まだ200mを専門にしていた頃のボルトだった。

ちなみにボルトの記録を彼が破るのは、2年前の世界ユース男子200mでボルトの大会記録(20秒40)を破って優勝して以来、2度目になる。

日本人選手の世界陸上における男子200mの最高順位は、14年前のパリ大会の末続慎吾選手の3位。

このことは、なんとなくでも覚えている方は多いのではないだろうか。

サニブラウンの吉報とともに末続の名前も再び世間は耳にすることになり、もちろん末続の歓喜よ再び、と世間も大きく期待をしている。

 

だが、この14年で男子200mは大きく変わった。

まず、銅メダルを決めたレースでの末続の記録は20秒38で、優勝タイムが20秒30。

20秒30は、今大会でまさに決勝進出のボーダーラインになったタイムだ。

サニブラウンは20秒43の着順2位で決勝への切符を手にした。

だが、400mとの二冠を狙うウェイド・ファン・ニーケルク選手(南アフリカ)は20秒28のタイム2位で、辛うじて決勝進出を決めることができた。

その次点、つまり決勝進出を逃した選手の中で最速の記録は、クリストフ・ルメートル選手(フランス)が記録した、まさに14年前なら銅メダルの20秒30だった。

 

それに、14年前の世界記録はマイケル・ジョンソン選手(アメリカ)の19秒32だった。

今の世界記録が19秒19だから縮まったのは0.13秒で、そう大差はないように見えるかもしれない。

だが、ボルトが2008北京五輪でその記録を0.02秒塗り替えるまで、世界は12年もの年月を要した。

たったの0.02秒だが12年間君臨し続けた世界記録を塗り替え、翌年にその記録をさらに0.11秒縮めたボルトが、いかに特異な選手であるかということがよくわかるだろう。

そして、そのボルトを約10年ぶりに欠いた、男子200mの頂点を決める戦いが今夜行われる。

これで、いかに200mが注目に値する試合かお分かりいただけただろう。

 

そして、その戦いに日本の18歳が加わる。

我ら日本人が注目するのは当たり前だが、世界も彼に注目を向けている。

その理由は予選で同組だったヨハン・ブレイク選手(ジャマイカ)を着順で破ったことにある。

彼の自己ベストは19秒26で、ボルトの世界記録に次ぐ、世界歴代2位の記録だ。

そして、5年前のロンドン五輪では男子200mで銀メダル、同じくロンドンで開催中の今大会の男子100mでは4位の実力者だ。

また、ボルトが2011大邱大会でフライング失となったあと金メダルを獲得したのもブレイクだ。

その選手に、写真判定の必要もなく、誰の目から見ても先着したとわかる形で勝った。

しかも、9月から大学生になろうとしている、短距離に決して強くない日本の選手が。

 

決勝に進む8人が出揃い、スタートリストを見るとさらに世界は驚愕する。

東洋の島国の少年の自己ベストは20秒32。

他の7人の自己ベストが19秒77~19秒97にひしめく中、彼だけ20秒台、かと言って19秒台目前というわけでもない。

また、他の7人中、サニブラウンの左隣を走るリチャーズ選手(トリニダード・トバゴ)ともう一つ左隣を走るアイザック・マクワラ選手(ボツワナ)以外の5人は100mの9秒台ホルダーでもある。

サニブラウンの100mの自己ベストもまた、今大会予選の10秒05であり、9秒台には僅差ではあるが、届いていない。

そしてダメ押しは、今大会200m予選の総合上位7人が、そのまま決勝のサニブラウン以外の7人となっていることだ。

予選8番目の選手は先にも紹介した、準決勝9番目の選手・ルメートルだ。

サニブラウンを初めて知る人間からすれば「なんでこの子が決勝に?」と思うのはある意味当然であり、注目が集まるのは無理もない。

準決勝終了後、公式機関であるIAAF(国際陸上競技連盟)が彼の母にtwitterを介して取材するという、異例の措置をとったことからも、注目度の高さがうかがえる。

 

大会前の下馬評と変わらず大混戦の中、優勝予想は?

 

サニブラウンが台頭してきた、ブレイクやルメートルが決勝にいないなど、予想外の事情はあっても、優勝争いが大混戦・予測困難ということには変わりはない。

400mとの二冠を狙うファン・ニーケルクもさすがに連戦の疲労の色も見え始め、準決勝はギリギリの通過だった。

また、マクワラは胃腸炎で2日前の400m決勝出場停止となっていたが、なぜか昨日一人で200mを走り、予選を超える水準だったため準決勝に進み、勢いそのままにファイナリストとなった。

昨日だけで200mを2本走っているのが他の選手と大きく異なる点で、どれだけ回復できるかがカギとなるだろう。

また、2レーンを走るミッチェル・ブレイク選手は開催国・イギリスの選手。

地元の大きな声援を力に変え、男子10000mのモハメド・ファラー選手に次ぐイギリス勢のメダリストとなれるだろうか。

準決勝を20秒12でトップ通過したヤング選手(アメリカ)も注目だろう。

 

ここまで決勝に進む選手たちの現状を予測してみたが、私の優勝予想は予選を20秒05で1位通過、準決勝2組でもサニブラウンに唯一先着した、リチャーズだ。

前に彼は100m9秒ホルダーではないと述べたが、彼は100mではなく400mを選んだため、公式戦を走っていないというだけで、潜在能力は十分にある。

準決勝もヤングに次ぐ全体の2位通過で、好調が伺える。

 

ここまでの考察からもお分かりだろうが、サニブラウンのメダルの可能性は高いといえない。

だが、ここまで世界中を惹きつけた快進撃の続きが見たいと願うのは当たり前だろう。

もちろん彼自身は全力でメダルをもぎ取るために駆け抜けると思うが、結果がどうであれ、これから先の競技人生の大きな糧となる試合にして欲しい。

 

最後に、この3000字超の記事を読破してくださったみなさん。

夜更かしでも早起きでもいい。

翌朝5:50までにテレビの前で待機していてほしい。

リアルタイムで見なかったことを後悔するレースが待っている予感がする。

 

 

written by. ENOKI( @enoki0520